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ブックオフ100円コーナーで買える経済入門書 その1

レビュー / / 編集

新型コロナの自粛のあおりで、ご多分にもれず今年は仕事が減っている。まあこんな時だからこそということで、このサイトの整備のように手をつけられなかったことに目を向けている。読書もその一つ。ここ数ヶ月はしばらく興味がなかった経済系の本を立て続けに読んでいる。

経済系といっても儲け話のような本ではなく、ブックオフの新書100円コーナーに置いてある、初歩的な経済や金融の解説書のようなものばかり。3月ぐらいから、目下読了した順番に挙げるとこんなところ。

  • 『金融政策入門』(湯本雅士・岩波新書)
  • 『日本銀行と政治』(上川龍之進・中公新書)
  • 『現代の金融入門【新版】』(池尾和人・ちくま新書)
  • 『日本銀行』(翁邦雄・ちくま新書)
  • 経済学科出身のくせにすっかり経済や金融の知識も頭から抜け落ちており、その空っぽをご披露するのも恥ずかしいところながら、今後どんな様相を見せるのか未だ見えない経済状況の下、興味ある方の参考になればと思い簡単に内容を紹介してみる(価格もお手頃だし)。

    各書で取り上げられた金融政策の成否についての価値判断は、私には全く手に負えないので省いた。以下は内容を概観しつつ、主に本としての構成や記述の特徴について書いている。

    『金融政策入門』(湯本雅士・岩波新書)

    荻窪駅前のブックオフで購入。金融政策について、中央銀行(日本なら日銀)や貨幣の役割から、金融政策に関わる基礎的な経済理論とその歴史的な進展、そして日本を中心とした先進国の金融政策史を紹介しながら、多くの先進国が目下直面する低金利下でのデフレとその対処法についてコンパクトにまとまられている。

    岩波というと左寄りの印象を持つ人もいるだろうが、特別にそんな偏向もなく、直近の日本政府の政策に対しても中立的に評価している。全くの経済初心者(インフレとデフレの違いがわからない、円高円安のような為替の仕組みがわからない、といった方)には難しいかもしれないが、新聞の経済記事が読める程度の人ならば、数式なども少なく、比較的分かりやすい本だと思う。

    日本の事例を中心として金融政策について知りたいと思う人には、最初に手にとってみていい本かなと思う。巻末には簡潔な索引があり、キーワードから遡って読むことができる。同じく巻末の参考文献も初学者にはかなり役立つ。

    『日本銀行と政治』(上川龍之進・中公新書)

    『日本銀行と政治』も確か荻窪駅前のブックオフで、『金融政策入門』と一緒に購入した。書名の通り、日本の中央銀行たる日銀と、ときどきの政治(おもに政府与党)との関係について書かれている。現在では政治とは離れた独立した機関としてある(はずの/べき)日銀が、与党やその中の政治家の意向によっていかに翻弄されてきたのかが良く理解できる。

    著者が政治を専門とすることもあり、経済学・金融理論的な記述は少ない。なので金融を経済学的な理屈をベースに理解したい人には向かない。しかし日本の戦後の政治家と日銀の関係がややジャーナリスティックに書かれているので、読み物的に日本の金融政策史を理解したい人には向いていると思う。

    自民党政権から民主党政権、その後の再びの自公政権の金融政策の連続性(実のところあまり変わっていないということ)など、普段政治系の新聞記事しか読まない人には目に鱗の部分もありそうだ。こちらは索引はないが、巻末に詳細な日本銀行と政治的なトピックについての年表が付属する。

    『現代の金融入門【新版】』(池尾和人・ちくま新書)

    『現代の金融入門【新版】』は『金融政策入門』巻末の参考文献紹介で取り上げられていたので読んでみた。こちらは金融政策のみならず、主な金融商品の紹介から派生商品(デリバティブ)などより高度化した金融商品の仕組みと問題点、そして金融システムの安定化に必要な国家による金融機関への規制・監督や、企業のガバナンスなど、金融全般についての知識が紹介されている。

    2007年のサブプライムローン問題を発端とした金融危機の直後に改訂が行われたため、サブプライムローンという商品や、アメリカの金融機関の仕組みや問題点について詳しく、分かりやすく書かれている。

    前置きなく専門用語が登場し、一瞬あれっ!?と読み返そうと考えてしまうような部分もあるが、ほとんどが読み進めればやがてその説明があるので、辛抱強く読めばそれほど難しい本ではない(一部数式が出てくるので、苦手な人にはヤマかもしれないが、最悪読み飛ばしても全体としては得るものが多いかと)。新聞などでよく目にする金融商品も登場するのも興味を引かれる人もいるのでは。巻末にかなり詳細な索引があり、初学者には読みやすい良書だと思う。

    『日本銀行』(翁邦雄・ちくま新書)

    こちらも『金融政策入門』で紹介があり読んでみた。まずはヨーロッパでの中央銀行制度の成立から始まり、アメリカの連邦準備制度誕生とその後の大恐慌、EU発足後に難渋しつつ誕生した欧州中央銀行成立までの世界的な中央銀行発足とその活動を歴史的にたどる。ついで日本銀行成立を歴史的事件とともに追い、その組織や業務、その金融政策について解説されている。日本の明治以降の経済史に沿って、日本政府と日銀の金融政策の変遷が簡潔にまとめられている。現代の金融政策についても、新聞記事では一言で済まされるような手法が、財務省や日銀内部でどのような流れで決裁が行われているかが具体的に解説されているのも面白い。

    後半は日本のバブル期以降のデフレへの対処法から始まり、アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)議長であるグリーンスパンの金融緩和の綱捌きとその功罪、欧州中央銀行の財政健全化を第一とする政策がギリシャなどの金融危機に与えた影響、ポール・クルーグマンのデフレ不況についての分析など、現代的なトピックも多く取り上げられている。書名とは裏腹に日本にとどまらず、先進国に共通するゼロ金利下でのデフレ不況への中央銀行の対応とその難しさについてかなり詳しく書かれている。

    文章も経済学書というよりはエッセイ風の趣が強く、この本も読み物好きには読みやすい本ではないかと思う。ひとつ残念なのは索引がないこと。288ページと最近の新書にしては厚めで読み応えがあり、用語のみならず歴史的な固有名詞も多く登場するので、キーワードで読み返したいと思う向きには不便を感じる。ともあれ内容については、日銀の制度の堅めな記述から最近の経済理論にまで間口も広い構成で楽しめる面白い本だと思う。

    以上、まずはその1として。どれも2010年代に発行された本だが、比較的安価で入手が可能。もちろん新型コロナ感染拡大以降には古さを感じてしまう部分も多いが、なんせ安い!

    近日中に続編を公開します。しかし、これは一体誰が読むんだろうか(笑)。まあいいや。いつか誰かに役立てば。届かない葉書のようなものとして上げておきます。

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